天才ヴァイオリニスト イツァーク・パールマンのドキュメンタリー番組。
途中からだけど、録画してくれていたようで見ていました。
(番組前半にもステキなお話があったようなので、オンデマンドで見てみます。)
ヴァイオリンの音は大好き。
番組ではパールマン夫人のお話も聞くことが出来ました。
「音楽は私たちに夢を見させてくれる」
なんと素敵な✨
私は常々、自分が音楽に携わっていることに疑問を抱きます。
何のために長唄(音楽)をやっているのか?
生きることに必要な食べ物を扱っているわけでもなく、身体を治す医師でも医療品でもなく、身体に纏う衣料品でもない。
目に見えない「音楽」というもの。
この番組を見て‥
自分は「音楽」で幸せを感じることが度々あるから離れられないのかも‥と、思いました。
至極、単純明快。
その答えを思いついた途端に思い出したことがひとつふたつ。
母が亡くなる数日前のことですが‥。(また母の話ですみません)
私は母が亡くなるかどうか‥という時期に演奏の仕事をひとつ抱えていて、覚えもんのことをベッドに横たわる母に話していました。
(母は長年、長唄のお稽古をしていたので、私の話をいつも楽しそうに聞いていてくれました。)
その時の母は死期が近いこともあり、病院では個室に移動しておりました。
舞台の仕事があるので私にお三味線を弾かさなければ‥と、思ったのでしょうか。
「ここにお三味線持って来て弾いたら? 喬子のお三味線聞きたいわ。」と言いました。
さすがに病院では難しいだろうと思いましたけども、ダメ元で看護師さんに尋ねてみると、「大きくない音だったらいいですよ。」と、まさかの許可が出て‥😅
翌日、私はお三味線を持って母の病室に行きました。
椅子に座り、バチを使わず、爪弾きの小さな音で。
母はベッドに横たわったまま、「あぁ‥えぇ音やなぁ。」と嬉しそうに微笑んで聞いていました。
病室に入って来られた看護師さんは驚きつつも、「わ~三味線って、初めて見ました! いい音ですね~♫」と母に笑って声をかけられたり‥少し和みの時間。
亡くなる、ほんの数日前のことです。
「まさか病院でお三味線が聴けるなんてねぇ。」と、母は笑っていました。
その数日後。
娘(JD)が2歳~3歳の頃に吹き込んでいたお歌色々の録音テープを聞かせてあげようと持って行き、枕元でかけていました。
ドクターは昔のアルバムなどを見せてあげて下さい、と仰ったのですが、徐々に物を見るのがしんどくなっていたので、「聞く」という方向にしようと思いました。
娘のお歌テープは長唄あり、童謡あり、歌謡曲ありの混ぜこぜです。
母は電動ベッドの背を少し上げて目を閉じ、たった一人の孫娘の幼い声をそれはそれは嬉しそうに‥微笑んでジッと聞き入っていました。
母について下さっていた看護師さんも、「あら、なんて可愛い声♫これはいいですね~♫」と、一緒に静かに聞いて微笑んで‥
もう、母と一緒にいられる時間はほとんどない‥
そんな悲しみの中で、何とも言えない幸せな時間でした。
今もその景色をよく思い出します。
そして、その夜に母は亡くなりました。
あと数日は持つだろう、と聞いていただけにショックでしたが、今から思うと、何というタイミングで、あのカセットテープを持って行ったことか。
母は、可愛い孫娘の歌声を何度も何度も巻き戻しては聴いて、また巻き戻しては聴いて‥本当に幸せそうでした。
音楽は(音楽を好きな)人を幸せな気持ちにする‥。
映画『戦場のピアニスト』では、ユダヤ人ピアニストがナチから逃れ、隠れ家にあるアップライトピアノの蓋の上から鍵盤を弾くモーションをします。
想像で「音」を鳴らすシーン。
飢えと、物音を立てられない極限のストレスの中、想像での演奏の間、彼は好きな「ピアノ」と「音楽」と共に、僅かですが幸せな時間を感じます。
このイツァーク・パールマンの番組の中でも、戦争時の話に触れていました。
戦争は本当に残酷だ‥
切ない音楽の話‥。
幸せの種類は人によって違いがあるけれど‥
いろいろ思うに、私にとっての幸せは、やっぱり長唄(音楽)を演奏したり、聴いたりすることなんだと思う。
私自身が幸せを感じたいから、演奏会をするんだと思う。
毎回、本番直前には緊張とストレスで、「演奏会なんてやらなきゃよかった。」って思うのに、懲りない(笑
自分の未熟な技量を目の当たりにした時には辛苦も伴うし‥(笑
演奏が「もひとつやったな‥。」って思う度、後々まで引きずるタチ。
でも、やっぱり舞台に並んで自分はつたないなりにも、一緒に演奏して頂く方のお声やお三味線の音を感じ、奏でる音やフィーリングがぴったりと合った時には、この上ない極上の幸せを感じてしまう。
不思議なもので、そういった舞台での「瞬間」には、お客様からの熱量もすごく感じます。
番組の中でイツァーク・パールマンが言っていました。
「(自分は)音楽を聴いて、こんなに感動できるっていうことがとても幸運だと思う。」と‥。
音楽を通じた「幸せ」がある✨
生きていく上で「幸せ」は、どんな形であっても少なからず必要だ。
それを味わいたくて、私も苦手な覚えもんを頑張れるのかもしれません(^_^;)
さて‥精進精進。
ここまで読んで下さった方‥
思いのままの駄文、お読み頂きありがとうございましたm(_ _)m