私は『義経千本桜』の「道行初音旅」が大好きです。
令和三年 初春文楽公演

第二部、二度目の鑑賞を終えまして…
こんなことってあるのかな?
今、そんな気分です。
ひとつの舞台を観て、かんっぜんに欲求不満が解消されている気がしてます。
消化?
解消?
昇華?
満足?
どんな言葉を使えば良いのかわからないけど、とにかく、あれ食べたいこれ食べたい、どこそこ行きたい、あんなことしたいこんなことしたい、などと言う俗な欲望が雲散霧消している。
まるで体内がきれいになったような…。
自分の中にちまちまと溜まっていた全ての欲求不満が洗いざらい流されて跡形もなく霧散した…といっても過言ではないほど、見事にきれいさっぱり。
…頭の中がすっきりしている。
不思議なほどの心の落ち着き感。
あれもこれも観に行きたかったけど、もう別にいいや。
そんな気持ちになってる自分がいます。
きっと大満足してるんだな。
出来ることなら、今月の千本の道行を毎日聴いて、観ていたい。
ボキャブラリーの貧しい私。
この気持ちをどう表現していいのかわからなくてもどかしい。
文豪ならどんな風に表現するんだろう。
とにかく、それぞれの方の芸がこんなにもイキイキ素晴らしく輝いている舞台が他にあるのか…と思う。
いや、「輝いている」どころではなくて、「輝きまくっている」。
もぅ、ほんとにどう言葉にすれば良いのかわからない。
ポテンシャルのある人達が、全力でその力を出せる舞台。
芸✖️芸の相乗効果。
素晴らしく作られた三味線音楽と、それを奏でる人の卓越された音楽性と技術、そしてその確固たる三味線の音に乗って、華やかに瑞々しく踊る静と忠信の二体のお人形。
床は迫力ある六挺五枚。
舞台も音楽もお人形も遣う人も美しくて…
心が浮き立つ。
こんなにすっきりとして美しい千本の道行が今までにあったかなぁ、と思う。
本当にすごい。
客席のお客さんが熱を持って舞台を観ているのがわかる…。
一生に何度あるかなんて…こんな舞台はそうそうないんじゃないかな。
徐々に排水口が汚れで詰まっていくが如く、ストレスや諸々の欲求不満で詰まっていた私の心身が、「素晴らしい舞台芸術」によって「ずあーーーーっ❗️」と、一掃された。
帰宅後、道行の旋律を口ずさみながらお鍋用の野菜を切る。
超ご機嫌さんで。
(こんなことは滅多にない)
「たたんたたたんた たたたたたーん♫」
と、何度もリフレインして、ハタ…と…。
そうだ、私は(一応)三味線弾き。
なのに、「たたんた」と歌うとはどういうことだ。
そこはやっぱり口三味線でなければ…。
チチンチチチンチ…
あれ?
チチンテチチンテ…だったかな?
あぁ…己の才能のなさが嫌になる_| ̄|○
いかん…
せっかくストレス解消したのに、また違う角度から気持ちが重くなってしまう。
…一人であれこれ考える「千本ハイ」の時間。
脳内で色んなことがぐるんぐるん。
「芸術」って、ほんっとにキケンだw
あぁ…千本ハイで胸いっぱい。
伝統芸能は何百年と続く芸能。
今月の舞台は、自分が生きてる内に観られて良かった、と思う舞台のひとつに間違いないと思う。